2014年度現代韓国朝鮮学会賞(小此木賞)

 2014年度現代韓国朝鮮学会賞(小此木賞)は、崔慶原『冷戦期日韓安全保障関係の形成』(慶應義塾大学出版会、2014年)に決定し、11月8日研究大会の懇親会において授与式が催されました。

 崔慶原会員による受賞作は、1960年代末から70年代までの冷戦変容期において、日韓両国がどのような安全保障協力関係を模索したかについて、主として、日韓という二つのアクターに焦点を合わせ、その政策と相互作用を実証的に分析したものであります。
 米中和解に触発された東アジアの秩序変動を背景に、ベトナム戦争の推移とも連動しつつ、いわゆる「安保危機」の時期を迎えていた朝鮮半島情勢をめぐって、日韓がどのような政策を試みたかが中心的なテーマとなっています。崔慶原会員の著作は、以下の点で高い評価を得ました。第一に、内容面において、日韓間の認識のズレや変化に注目することで、安全保障協力関係をより立体的かつダイナミックに描いている点であります。韓国が迎えた二つの安保危機に際して、日本が従来の冷戦型の協力に加えて、米朝交渉の促進など、いわば脱冷戦型の枠組みを模索したことなど、多くの新しい知見を示しており、学術的な貢献度の高い研究といえます。第二に、近年の外交史研究との比較においても、マルチ・アーカイヴァル研究に基づく高い実証性を示している点です。日韓の外交史料のみならず、米国の各大統領図書館所蔵文書に至るまで、幅広い一次史料の渉猟によって、日韓両国の外交・安全保障政策の多様な側面を実証的に提示しています。以上のような評価に基づき、現代韓国朝鮮学会賞(小此木賞)の受賞に値する論考であると判断しました。

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